多角的・網羅的なデータ分析で介護給付適正化に確かな手応え
顧客名:神奈川県伊勢原市様


伊勢原市 保健福祉部介護高齢課
係長
村瀬 祥二郎 様
世帯数:47,596世帯(令和7年1月1日現在)
概要:神奈川県のほぼ中央に位置し、南部を平塚市、西部を秦野市、北東部を厚木市と接する。山林原野が市の面積の約3分の1を占め、豊かな自然と温暖な気候に恵まれている。丹沢大山国定公園の一角に位置する大山は同市のシンボルで、古くから信仰の山として崇められ、「大山詣り」は平成28年、「日本遺産」に認定された。
けあプロ・naviとトリトンモニターを用いて介護事業者支援や介護給付適正化事業に取り組んでいる伊勢原市様。今回は両サービスを組み合わせた事業への取り組みをお伺いしました。
- トーテック
- ―介護給付をめぐり、どのような問題意識をもっていましたか。
- 村瀬様
-
当市では、2045年頃まで高齢化の進展が続く見込みで、今後も介護給付費の増加が懸念されています。また近年では、一部の高齢者向け集合住宅における過剰・不当なサービス提供が全国的に社会問題となっていますが、当市においてもそうした事例が確認されており、介護給付費増加の一因となっていました。
ほかにも、介護報酬の算定要件に関する法体系は複雑なため、発覚していない事業者の誤請求があるのではないかという懸念もありました。
そのため、介護給付費を適正な水準に維持し、介護保険制度の持続可能性を高めるためにはこれらの問題への対応が急務だと考え、介護給付適正化に取り組んできました。
- トーテック
- ―具体的に、どういった取り組みを行ってきましたか。
- 村瀬様
-
おもに、「運営指導」と「ケアプラン点検」に取り組んできました。運営指導は、介護保険サービスを提供する事業所に出向き、書類検査やヒアリングにより法令との適合性を確認し、取り扱いが不十分な場合は改善指導を行います。
ケアプラン点検は、ケアマネジャーとの面談を通じ、ケアプランが自立支援に資する適切な内容となっているかどうかを確認し、必要に応じてケアプランの再作成を行ってもらいます。
しかし、いずれの取り組みにも課題を感じていました。
- トーテック
- ―どのような課題でしょう。
- 村瀬様
- いちばん大きな課題は職員の人手不足です。権限委譲などにより当市が運営指導を行うべき事業所の数は10年前から約4倍に増えた一方で、指導業務を担う職員は減少しています。それに加え、複雑な法令の知識や調査スキルの習得にも時間を要するため、人材育成も十分に行えていませんでした。
また、運営指導には時間の制約があるため、すべての利用者の長期間の請求状況を網羅的に点検することができません。業務委託により実施しているケアプラン点検も同様に、予算の制約により実施できる件数が限られています。加えて、点検対象とするケアマネジャーやケアプランは、担当者の経験則に基づき給付実績の特異傾向などから選定していましたが、給付実績だけでは気づけない視点があるのではないかと感じていました。
そうしたなかで、トーテックさんから介護給付適正化事業総合支援システム『トリトンモニター』の提案を受け、関心をもちました。
- トーテック
- ―どのような点に関心をもったのですか。
- 村瀬様
-
給付状況の「適正チェック機能」です。この機能は、給付実績と要介護認定データを取り込んでそれぞれの情報を突合し、算定基準を満たさない給付や身体状況にそぐわない給付、過剰な給付など、多角的な観点からチェックできるものです。加えて、すべての受給者の長期間にわたる請求状況を網羅的にチェックすることができます。
一例をあげると、「認知症自立度がⅡ以下の状態の方に認知症加算Ⅰが給付されている」「重度の寝たきり状態の方に歩行杖が貸与されている」といった条件で、疑義がある給付を自動抽出できます。
こういった機能が先に述べた課題の解決に役立つのではないかと期待し、令和5年度に導入することとしました。
- トーテック
- ―システムの活用状況を教えてください。
- 村瀬様
- 『トリトンモニター』では、適正チェックにより抽出対象となった事業所へのヒアリングシートと鏡文も自動作成できるため、事業所に対してヒアリングシートを送付し、ケアプランの見直しや過誤調整の有無の結果を市に返送してもらいます。ヒアリングシートの送付や返送については、けあプロ・naviの関係者向けサイトである『ケア倶楽部』を介してオンライン上でやりとりできるため、一連の作業にかかる事務負担も抑えられています。
- トーテック
- ―システムの活用により、どのような成果を得ていますか。
- 村瀬様
-
導入の初年度は限定的な運用を行いましたが、合計55事業所で164件の疑義がある給付が抽出され、ヒアリングシートを送付しました。このうち、自主的にケアプランの見直しが行われた割合は約1割で、介護報酬の返還が生じた割合は約2割ありました。仮に、ケアプランや誤請求が是正されず将来にわたって不適切な給付が続いていた可能性を考えると、実際に返還があった金額以上の効果額があるものと考えています。また、自主的な見直しが行われなかったケースでも、運営指導による対応に切り替えを行い見直しにつながった事例もありました。
ほかにもケアプラン点検対象者の選定にも『トリトンモニター』による抽出結果を活用するなど、既存の取り組みにも相乗効果を発揮しています。
- トーテック
- ―今後、どのような方針で介護給付適正化を推進していきますか。
- 村瀬様
- 『トリトンモニター』は運営指導やケアプラン点検など既存の取り組みでは手が届かなかった部分を補完するものと認識しており、それぞれの取り組みには長所・役割があるため、システム導入により既存の取り組みにかかるリソースを削減することは決してあってはならないと考えています。今後は、『トリトンモニター』により多角的な観点から広く機械的なチェックを行うとともに、運営指導やケアプラン点検を通じたきめ細かな指導・点検の充実も目指し、相乗効果を発揮させ、さらなる給付適正化を推進していく考えです。
また、介護保険制度の安定的な運営を行うためには、ほかにも市民や関係者への情報提供体制の充実も重要であると考えます。
- トーテック
- ―詳しく聞かせてください。
- 村瀬様
- 高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で生活を継続するためには、介護だけでなく、医療・介護予防・住まい・生活支援などが地域のなかで包括的に提供される体制が重要となります。そのため、分野を越えた幅広い情報を発信できる仕組みが必要だと考えていました。しかし当市では従来、そうした情報が複数のWebサイトに分散されていたため、「一元的な情報収集が難しい」といった声が関係者から届いており、市としても問題意識をもっていました。
こうした課題に対応するために、けあプロ・naviの市民向けサイトの導入も決め、現在は伊勢原市における包括的な情報提供体制の構築を進めているところです。
- トーテック
- ―具体的に、どのような情報発信を行っていますか。
- 村瀬様
- 令和6年7月に「伊勢原市けあプロ・navi」というオープンサイトを開設し、まずは介護保険事業所や高齢者向け集合住宅の情報、介護事業所の空き情報などを集約したコンテンツを掲載しています。また、介護事業所の求人情報やボランティアの募集情報も掲載し、トップ画面から検索できるようにしました。介護人材不足が深刻な問題となっているいま、地域に根ざし、介護に特化した求人サイトとしての役割も期待しています。
『けあプロ・navi』については、つねに鮮度の高い情報を収集・更新できるような仕組みが備わっている点も評価しています。
- トーテック
- ―情報更新はどのように行うのですか。
- 村瀬様
- 事業所側からリアルタイムで情報更新を行えるのはもちろん、掲載情報については定期的に情報収集や更新をトーテックさんに委託しています。たとえば、居宅介護支援事業所の空き情報であれば2週間に1度調査したうえで掲載情報の更新を行います。
こうした仕組みがあるため、掲載内容の更新を事業所側だけに委ねることなく、つねに鮮度の高い情報が掲載されることが期待できます。
- トーテック
- ―今後の活用方針を聞かせてください。
- 村瀬様
- 令和6年度は、介護に関する情報の掲載からスタートしましたが、来年度には医療機関や薬局などの情報の掲載も検討しています。今後、順次掲載する情報の範囲を広げ、将来的には地域包括ケアシステムや共生型社会の構築に関する、さまざまな関係者の利用を想定した、伊勢原市の総合的な情報プラットフォームとして『けあプロ・navi』を活用していく方針です。
当社スタッフコメント
この度はけあプロ・naviをご導入いただき、誠にありがとうございます。
伊勢原市様では、介護職員の人材確保支援を目的としたけあプロ・naviの活用を第9期介護保険事業計画に載せていただく等、非常に精力的にご活用いただいております。
今後より一層、地域包括ケアに関する情報提供ができる様に、皆さまからのご意見をもとに、引き続き全力でご支援させていただきます。